THE LET’S GO’s
(レッツゴーズ)
思い切り泣くもよし、
ムカつくもよし、
そこには何かしらがあるから
私たちのロックンロールを聴いてほしい!
Member(L→R) : ミィ (B/Vo) 山田モエコフ(Dr/Vo) COCO(G/Vo)
Interview / Text /Photo : Ayumi Tsubouchi(VAMP!/CHICKS RIOT!)
バンドが好き。ライヴが好き。そして、ロックロールが何より大好き。結成以降そんな思いを全身で発信しているバンド、THE LET’S GO’s(レッツゴーズ)。前作『REAMP!』から約5年ぶりとなるアルバム『I HATE THE LET’S GO’s』はパンク度がグッと増してささくれ立ってもいるし、50〜60年代のポップなテイストも加味されてパーティ感もグラマラスな雰囲気もさらにプンプン。可愛いもカッコイイも、ポップもヘヴィもガブッと丸呑みにした、パーフェクトな全方位型ロックンロールを確立させている。これを最強のアルバムと言わずして何と呼べばいいだろう。いよいよスタートする最新作のレコ発ツアーを直前に、逞しく鳴り響く『I HATE THE LET’S GO’s』が生まれたその背景について、久しぶりにメンバー3人に会って話を聞く(約5年ぶり!)。レッツゴーズの結成にまつわるインタビューについては本誌issue 05、文中に登場するニッキー・コルヴェットとの特別インタビュー企画は本誌issue 06上で記載しているので、そちらも合わせて読んでみてほしい。
ニッキー・コルヴェット編:
レッツゴーズ初のぶっ通しツアー
——新作『I HATE THE LET’S GO’s』の発売以降、周囲からのリアクションなどを含めてどうですか?
ミィ(B/Vo) これまで届いていなかったところにちゃんと届いているという実感があって嬉しいですね。新作を出して以降は、いつもの顔ぶれとは違う、まったく知らないところから…例えば、SNS経由で反応をもらうこともあったり。
山田モエコフ(Dr/Vo,以下モエコフ) アニメのアイコンを使っているような人たちが「レッツゴーズ、いいじゃん!」って反応してくれているのを見て、おおー!ってメンバーで喜んでいました(笑)。
——デビュー作から2作目『REAMP!』にかけても大きな変化があったけど、『REAMP!』から新作にかけてはまた別の変化を辿っているなと。レッツゴーズがロックンロール・バンドとしてやりたいことをさらに掘り下げているという以上に、この5年間の濃い活動期間の集大成が、今回の作品そのものになっているという印象がありますね。
ミィ 確かに、前作から5年というブランクはあるんですけど、自分たちの感覚としては濃縮されたここ2年くらいの変化が詰まっている気がしていますね。ライヴ本数の多かったのもちょうどここ2年くらいだから。なので、心境や精神面での変化してきた感じも、新作にはふんだんに盛り込まれております(笑)。
——ということは、ニッキー・コルヴェットのバック・バンドとしてジャパン・ツアーを回った辺りから? 確かに、観るたびにライヴ・アクトが変貌していったのは、あのツアー以降だったと記憶しているのだけど。
ミィ ですね。成長っていう以上に物事も見方が変わったというか。これまでは自分たちの目線で自分たちのやっているモノとしてのバンド活動しかやってこなかったのだけど、ずっと憧れてきたニッキーがフロントで歌うという、重みのある状況の中で自分たちはどうあるべきで、どういう音を出すべきか? そんなことを考えるいい機会になりました。(ニッキー側からツアーで演奏する)セットリストがきたのもツアー開始の2ヶ月くらい前のことで、実質練習できたのもそのくらい。しかも、ニッキー本人と音合わせできるのは来日公演の2日前という…。限られた時間の中でバチバチやり合いながらメンバー同士でとことん話し合って(笑)。これまでバンドの出音について議論したり、追求したりすることすらなかったので、ニッキーのバック・バンドを務めた経験でその辺の感覚をつかんだというのはありましたね。
——そもそもニッキーのバック・バンドを務めることになった経緯って?
COCO(G/Vo) ニッキーが日本でツアーする時のバック・バンドを探しているという話を聞いていたので、ずっとやりたいと思っていたんですよ。で、いつもニッキーを日本に呼んでいたHAVENOT’S(ハヴノッツ)とツアーをする機会があったのでその時に相談をして…それからですね。そのひとつ前の来日公演時に私、直接レッツゴーズのCDを渡しているので、ニッキーもうちらの存在くらいは知っていてくれたと思うんですけど。
——そんなニッキーと実際に対面した時の気持ちはどうでしたか?
ミィ はーーーっ!(笑) 緊張と嬉しさで…いや、緊張の方が大きかったかな。
モエコフ ツアーが全部終了してからかな。物事を実感して振り返れたのは(笑)。
ミィ その時はもう必死すぎて。「わー、ニッキーだ!」っていうテンションではあったけど(笑)、言葉が通じないこともあるし、「どう?」「どう?」ってしつこく聞いていました(笑)。ニッキーっていつも「ロックンロール! イエ〜!」っていうノリの人だから、あまり細かく気にしてないのかもしれないけど、どうしても気になっちゃって。
——道中はどうでしたか?
COCO 7〜8箇所を車1台でハヴノッツと一緒に回ったんですけど、レッツゴーズとしてはぶっ通しのライヴをやるのはそれが初めてのことで。もう、楽しい!の一言でした。
ミィ ニッキーの楽しい人柄に私たちはずっと励まされていて(笑)。
COCO 車中で歌を歌ってくれたり。
ミィ 一緒に行動していても表情がコロコロ変わって、お母さんみたいな時もあれば、少女のような瞬間もあって。あと、そうそう、その夜に履くブーツを「どっちがいいと思う?」って嬉しそうに私たちに聞いてきてくれたことも(笑)。うちらと言えば、「今日のステージ、頑張るぞ!」って鼻息を荒くしているんですけど、ちょっと気負っている私たちの心をそんな言葉でさりげなくほぐしてくれたこともありました。
モエコフ そういえば、移動中のサービスエリアでギターウルフとバッタリ遭遇したこともあって。今回会えないと思っていたニッキーも飛び上がって喜んでいました。ツアー開始直後にそんな嬉しい出来事があったから、その勢いでテンション上げてツアー全編をやり切れたという感じもあったと思う。面白かったです。
——あ、ニッキーと言えば、本誌issue 06でニッキーとレッツゴーズがお互いに10の質問を出し合って答えるという、“ニッキー・コルヴェット×レッツゴーズ企画”をやらせてもらいましたが、いかがだったでしょうか?
COCO VAMP!の誌面は掲載が日本語表記のみなので、ニッキーから「ここを訳して!」って言われて移動中に英語で説明したんですが、ニッキーが私たちにちゃんと興味を持っていてくれていることが嬉しくて(笑)。あと、ひたすらハッピーなイメージのニッキーでさえ、(レッツゴーズからの質問の回答として)「誰もが私を好きになってくれるわけじゃない」とか、「自分が優れたシンガーだと思ったことはなかった」と言っているのにはビックリでしたね。と同時に「でも今は自信に溢れている」と断言しているのには嬉しさを感じたし、感動的でもあって。歌い続けている間にはきっとツラい経験もあったと思うんですよ。現に歌っていなかった時期もあるわけで。でもそれを乗り越えてこそ今のパワフルでハッピーなニッキーがいるんだなって。そして、「16歳のニッキーに今言ってあげたいことは?」という私たちからの質問の回答が、まるで今の自分に言われているような内容だったので、すごく勇気をもらったし、親近感も湧きました。
コートハンガーズ編:
固定概念をぶち壊されました!
——続いて、米アトランタから来日したCOATHUNGERS(コートハンガーズ)のサポートでツアーを回ったこともレッツゴーズに多大な影響を与えていると感じているのだけど、ご自身としてはどうですか?
ミィ すごいイパンクトでした。少なくとも、私はすごく衝撃的だった!
——まず、日本にいないタイプのガールバンドじゃない?
ミィ いないですね。何ていうか、もう“アトランタ”!みたいな(笑)。
全員 わははははは!
ミィ (笑)もうね、「これが海外(のバンド)か!」っていう感覚でした。
COCO 音楽っていうか、もはや芸術の域でしたね。
——え、というと?
COCO もうね、すべてが自由!
モエコフ メンバーの3人全員がフィーリングでぶつかり合っている感じで。
ミィ 大宮公演の時だったかな? コートハンガーズの3人が「おめえ、なんだよ!」って言い合ったり、マイク倒したり、喧嘩みたいになっていたんですよ。その光景に私たちは「はっ…!」って固まっているんだけど(笑)、そんな状況でさえショウとしてちゃんと成立していたのがすごくて。ムカついても偽るんじゃなくてぶつかり合って、ぶつかり合うだけじゃなくて、バンド内でフォローし合って前に進める状態にしっかり昇華させるっていう。その時ですね、「ああ、これが生のライヴってヤツなんだな」って衝撃を受けたのは。
——叩き上げのバンドのなせる技だね。
ミィ あとは、やっぱりアメリカと日本って生活様式も違うじゃないですか、お風呂やトイレにしても。コートハンガーズは「先に寝るね、じゃ!」ってお風呂も入らずにそのままパッと寝てしまうのに、ウチらといえば、「ああ、お風呂入りたいな…」って小さいことをすごく気にしていて。そういう部分でもすごさを感じました(笑)。
——(笑)そのツアーの最終公演を観させてもらったけど、レッツゴーズのライヴがそれまでとはいい意味で別物になっていて。すごくパンクだったなって!
ミィ そうなんですよ。私自身はコートハンガーズとの出会いが本当に衝撃的だったんです。固定概念をぶち壊されたと言っても過言じゃない。これまで自分の思っていた“こうでなくちゃ!”はどれでもマジでどうでもいいことだったんだなって(笑)。
——というと?
ミィ バンドたるもの上手に演奏しなきゃとか、ロックンロールはこうあるべしみたいな? 例えば、コートハンガーズのような人たちだって自然体でやっているだけのことなのに、勝手に自分で“ならねば”を作って思い込んで、最終的に自分が自分で身動き取れない状態に追い込んでいたというか。
——イメージにとらわれすぎていたのかな?
ミィ そうかも。
——ただ、そのツアー最終日のライヴはそういうのをまったく感じなくて。文字通り、剥き出しのレッツゴーズでした!
ミィ ロックンロールじゃなきゃいけないという思い込みを完全に取り払うことで、逆にロックンロールになったみたいな感じだったのかな?(笑)
——なぜ“ロックンロールでなきゃ”とか“ロックンロール・バンドならこうあらねば!”という意識がそこまで強かったんだろうね?
ミィ メンバー3人それぞれ、バンドへの思いは異なると思うんですけど、私はレッツゴーズに加入した最後のメンバーなので、だから余計に“レッツゴーズたるもの…”みたいなものが強くあったのかもしれない。ただ、それも、バンド全体で作り上げていた“こうあらねば”というものも客観的に見れば単なる偶像にすぎなかったんですよね。ただ、“それ”に気づくことができて、3人の思う「私はこうやりたい」が明確になったことで進むべき道が自ずと見えてきて、3人のカラーがハッキリと出た3人の虹みたいなものができるようになったんじゃないかなって。今までは…ぼんやりとしたグレーで(笑)、でも「頑張ってあのロックンロール・カラーのようなものを目指そう!」って言っていただけだったんだと思う。
COCO 私にもありましたね。これまでは、例えば人前で歌うならちゃんとMCをしなきゃいけないとか、楽しそうにしていなくちゃとか。でもMCは得意じゃないからやめようとか、無理しないとできないことをどんどん排除して。で、できることを一生懸命やるスタイルに変えていったんですよ。そして、ステージ上でいかに楽しくロックするかみたいなスタイルだったのを、コートハンガーズ以降はどこまで自分自身を剥き出しにできるかとか、必死にやることこそが一番重要という感覚でやっていますね(笑)。やっぱり人のライヴを観ていても、そういうモチベーションでやっているバンドのステージにグッとくるようになったし。
モエコフ さっきミィちゃんが言っていた、レッツゴーズに対する“偶像”を私たちは“レッツゴーズおばけ”と呼んでいるんですけど(笑)、うちらは“そこ”にぶら下がって手を抜いていた部分があったと思っていて。ちょっと話は戻るんですけど、ニッキーのバック・バンドをやっていた時って、今思うと“レッツゴーズおばけ”にしがみついて手を抜いて、後ろでふわっと叩いていただけだったって感じるんです。そんなところにコートハンガーズの自由なお姐さんたちから、メンバー間でしっかり築かれた信頼関係とパワーバランスありきでバンドはあれだけの爆発力を発揮することができると教わって。あの3人のおかげで、私の中から“レッツゴーズおばけ”はいなくなりましたね(笑)。と同時に、バンドって考え方ひとつでまたさらに楽しくもやれるんだなって発見を新たにさせてもらいました。
——レッツゴーズはこれまでも、バンドが楽しい、ライヴが楽しい、ロックンロールって最高だ!ということをバンド全体で伝えるグループだと思っているのだけど、ここにきて新たな価値観が加わってバンド史上最強の形になってきているって実感しています。
モエコフ そう、ほんとその通りです!
ミュータンツ編:
思った以上にハマった新たな曲の作り方
——ところで、来日アーティストとの絡みと言えば、もうひとつ。元ダムドのラット・スキャビーズ氏によるTHE MUTANTS(ミュータンツ)とのコラボ共演もありましたね。
COCO はい。そもそもはセイジさん(ギターウルフ)からのお誘いがきっかけだったんですよね。私たちがダムドの「Neat Neat Neat」をカヴァーしていたのをJET BOYS(ジェットボーイズ)30周年企画ライヴで観て下さっていて、私たちもラットの最新作『TOKYO NIGHTS』に参加することになって(※ギターウルフ、The 5,6,7,8’sなども参加)。今回はミュータンツから先にオケをもらって、そこにメロディと歌詞を載せる作業をしたんですけど、今までそんな手法で曲を作ったことがなくて(笑)。でも締切まで2〜3日しかないぞという。
ミィ そう、めっちゃ時間がなくて。1曲目の仕上がりを気に入ってもらえたらしく、ギリギリのところで、さらに追加の依頼をもらったりして。オファーいただいた日もライヴをやっているという状況だったし、テーマを先に決めてすぐ着手しなきゃみたいな。
COCO 私はメロディを書くのが好きで、ミィちゃんは歌詞が得意。その時はすでにオケはあったので、私が先にメロディをつけてミィちゃんに渡して、そこにミィちゃんが歌詞を載せて完成させる…っていう感じにして。
ミィ 先にテーマを決めて曲作りを進めていくというやり方がうちらにとっては初めてのことだったから面白くて、案外すんなり完成したんですよね。
COCO いろんなプロジェクトに参加して、貴重な体験をたくさんさせてもらいました!