Interview |くつした(from Kyoto)前編

Interview |くつした(from Kyoto)前編

くつした(KUTSUSHITA)

技術的にうまくいかなくて
イメージと違う仕上がりになるけど、
それが自分たちのオリジナルに
なっているんだと思う

Member(L→R) : おくむら(Dr/Cho/Per) ながおか(G/Vo/Key) まち(B/Cho)
Interview /Text /Photo : Ayumi Tsubouchi (VAMP!/CHICKS RIOT!)

京都を拠点に活動中の3人組“くつした”。パンクでロックンロールなサウンドと爆発力のある蒼い歌にハートを掴まれた早耳の音楽ファン続出で(私もそのひとり!)、名曲「フロムメモリー」を収録したファースト・アルバム『WAO!!!』(2015年発表)は、完全自主制作盤にも関わらず大型レコード店を中心に早くから話題に。そんな注目の若手として期待を集める “くつした”が初公式盤の新作『きのうみたゆめ』をついにリリース。結成当初メンバーが公言していた(?)“ラモーンズとPUFFYの中間を目指すバンド”をもはや良い意味で凌駕、どの角度に回しても圧巻の風景を見せてくれる万華鏡のようなマジカル・ポップなアルバムを届けてくれました。ユニークなストーリーと世界観を持った歌も、ロックンロール、英国パンク〜ニューウェイヴ、フォーク…とさらにヒダを織り込んだサウンドも進化を遂げてパワーアップ。ニューカマーに敏感な若手リスナーだけでなく、これは耳の肥えた大人のロック・ファンをもニヤリとさせてしまう内容でしょう。可能性を十二分に秘めた“くつした”。少年ナイフに続くバンド!とご紹介したくなる3人組、さて一体どんな人たちなのでしょう? 『きのうみたゆめ』発売直前にビデオ電話で行なったインタビューをまとめましたので、以下どうぞ。

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今は『WAO!!!』の時ほど
ラモーンズっぽいわけではない

——くつしたは最初からこの3人でやっているんですか?

ながおか(G/Vo/Key) 最初は(まちを指して)このふたりでユニットだったんです。まちがギター、私がキーボードという、今とは違う編成で。キーボードでリズムのパターンを作って、それに歌を乗せていました。

まち(B/Cho)当初はギターも弾けない、ベースも弾いたことない…みたいな状態だったんですよ。とりあえず、偶然にも同じ靴下をはいていたからという軽いノリでやっていただけで。

——ええっ、プロフィールに書いてあったエピソードは事実だったんですね?

まち はい、半分は本当なんですよ(笑)。今のメンバーが全員揃っていたわけではないんですけど、私とながおかが本当に同じ靴下をはいていて。

——そんなことってあるのね!(笑) ちなみに、どんな靴下だったんですか?

ながおか もうね、「普通こんなのはくかよ?」みたいな柄で(笑)…白地に緑と青の病気みたいな柄…。

まち いや、花柄花柄(笑)。

ながおか すみません…花柄でした(笑)。

まち 壁紙みたいな花柄だったけど(笑)。

——(笑)ということは、ふたりは同じ学校か、職場だったんですか?

おくむら(Dr/Cho/Percussion) いや、僕も含めて全員同じ大学だったんですよ。

ながおか そして、同じサークルに所属していたんです。

——軽音部とか、音楽系のサークル?

ながおか ですです。(サークルの)何かで集まった時のことなんですけど、靴を脱いだら「あれ!」って。「その靴下、私もはいてる!!」って(笑)。

——(笑)へえ! それは運命的ですね。

ながおか お酒も入っていたから、ちょっと軽いノリでバンドを作って。

まち それで、“くつした”っていうバンドを組もうって。

——(笑)そこから、まずはユニットとしてスタートしたわけですね。最初はどういう音楽性でしたか?

ながおか 前身のくつした…まちとふたり編成の時は、正直訳わかんなさすぎて、結果的にアヴァンギャルドな感じだったんですよ。途中で限界を感じてギターを取り入れるようになって、自分たちの好きなロック系のバンドをやりたいって徐々にシフト・チェンジしていって。ただ、名前は気に入っていたので“くつした”のまま、ドラムを入れた3ピースでやってみようって今の編成になりました。

——おくむらさんはどういうタイミングで加入したんですか?

おくむら 当時僕は同じサークル内で別のバンドをやっていたんですよ。ただ、大学3年の頃までやっていたグループのメンバーが全員先輩だったから、先輩がすると同時に(そのバンドが)なくなってしまって。ちょうどそのタイミングで声をかけてもらったんです。

——それって何年くらいのことでした?

まち うーん、(ながおかとの)出会いが2008年で…。

おくむら 僕が加入したのは…2010年ですね!

——音楽性が固まってきたのは3人編成になって以降?

ながおか そうですね。ふたりでやっていた時代、実は一度活動が自然消滅した瞬間があったんですけど、そこから復活して以降は、土台の部分は今に通じる内容になっていたと思います。

おくむら 好きなジャンルはそれぞれ微妙に違うんですけど、全員がロック好きで、方向性もわりと似ていたので3人の好きなものをまとめたら結果的にこういう感じになるという。今やっている音楽性が落ち着きどころだったというか。

——3人が共通して好きな音楽というと、どの辺りですか?

おくむら 大まかに言うなら、ロックンロールやパンクですね。でも、好きなものを具体的に挙げていくと、少し違ってくるんですけど。

——どのくらい違います?

ながおか 例えば…私たちの年代ってウィーザーやストロークス世代になるんですけど、ここのふたりはオンタイムで聴いていたのに、私はかなり経ってからやっと…という感じだったり、大学のサークルで周囲から「それが好きならこれもきっと好き」って薦められて聴いていた音楽も全然新しいものではなかったり。同世代が聴いているモノを、私はあまり知らないんですよ。

——逆に、古い方がお好みですか?

ながおか そうですね。周囲からルーツ音楽を薦められてその辺を聴いていたという感じだったので。

——例えば、どういうバンドを?

ながおか お〜っ(笑)、ひとことでは難しいですね。えっと…例えば、少年ナイフが好きという話をしたら「じゃあ、これはどう?」ってラモーンズを薦められて、ラモーンズが好きならニューヨーク・ドールズやビーチ・ボーイズもって。ビートルズは元々好きだったので…その辺から(ローリング)ストーンズやザ・フーも…って。あとは、フォークソングも好きなので、「ボブ・ディランは?」って言われて聴いてみたり。日本人で言うなら高田渡さんとかね。

おくむら (ながおかとまちの)ここのふたりは少年ナイフを通っているんですけど、僕は通ってないんですよね。存在は知っていても音源をちゃんと聴いたことがない…とか、そういう微妙な違いがメンバー間にあって。

ながおか じゃあ、例えば何が好きか、それぞれ言ってこう!

おくむら 僕はジミヘン(ジミー・ヘンドリックス)とか、ジョンスペ(ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン)…ふたりはあまり好きじゃないかもしれないけど、キング・ブラザーズとか。

ながおか そんなことないよ〜!

——わりと骨太で筋肉質な音が好きなんですね。

まち 私は…高校時代からインディ系のライヴへ行っていたタイプで、大学時代はゆらゆら帝国、2000年代のバンド…例えば、銀杏ボーイズへ行っていました。高校時代は毛皮のマリーズとか。

——おー! 3人の“好き”がしっかり音に滲み出ていますね。ポップさが前面に出ているとはいえ、バックの音は結構パンクでロックンロールですもんね。

ながおか おっ、ありがとうございます〜!

少年ナイフを聴いて、
こういうのをやりたいなって

—— “ラモーンズとPUFFYの中間を目指すバンド”というフレーズは以前からよく見かけていて、今回の新作プレス・リリースにも記載がありましたけれど、やはり、そこはバンドとして目指したいところですか?

ながおか あ…いや(笑)。

まち 正直なところ、この言葉がこれだけ大々的に使われるようになるって思っていなかったんですよ(笑)。

おくむら このフレーズって3人編成になって間もない頃、「俺らの目指すところは“ラモーンズとPUFFYの中間”やな、あはは!」みたいな感じで言っていただけで。

ながおか 当時は今ほどサウンドクラウドもYoutubeもなかったので、少しでもホームページ上で音楽の雰囲気を伝えられないかなと考えて。分かりやすくていいねって意見が一致したのがこのフレーズだったんですよ。

まち それが、今やこんなに太字で書かれるようになるなんて(笑)。

ながおか 私はギター・ソロをほぼ弾かずにコードで演奏するし、自分で言うのも何ですけど音もわりとキャッチーだと思っていて…。

おくむら あとは、女の人ふたりが歌っているし。

ながおか PUFFYならみんな知っているからわかりやすいねって。ちょうどよい説明だと思って当時のホームページに掲載していて。

まち 結構適当に書いたものだったんですけど、今となってはどのホームページにもこの文言が掲載されているという。(今のくつしたのサウンドは)『WAO!!!』以上にラモーンズラモーンズしているわけでもないので、あれはやや小声で言ってもらえたら嬉しいです(笑)。

——まちさん、ながおかさんはさっき少年ナイフが好きというお話でしたけど、シンパシーを感じることってあります?

まち 最近はイメージから曲を作るようになってきていますけど…バンドを始めた頃は「こういうサウンドをやろう」って集まったわけでも、「これみたいなの」「あれみたいなの」という言葉のやりとりで曲作りをしていたわけでもなかったので、当初は自分たちがパンクをやっている自覚も実感もまるでなかったんですよ。やれることを単純にやっていただけで。ただ、お客さんから「少年ナイフ好きですか?」と言われることがよくあって、逆に「もうちょっと聴かなきゃ」って思うことはありました(笑)。ガレージやパンクとか…自分に抜けている要素がナイフの音楽には入っているから、その後まとめてCDを買った記憶もあるし。

ながおか 最初聴いた時は衝撃…でしたね。なんて言うんだろう…えっと。

まち そのまま正直に言ってもいいんじゃない? 少年ナイフって初期の頃は、(演奏が)決してうまいとは言えなかったじゃないですか。

ながおか でもセンスがすごくないですか? 凡人のようでいて凡人じゃないというか。メロディ・センスも、歌詞も、すごいし。説明的でもなく、ごく一般的な単語を使っていても不思議とキラキラしたものを放っているし。カッコいいところもあるけど、トキメキもある。本当にすごいですよね。曲…というか、すべてが良い。あれは夢中になりますよ。演奏もシンプルであってセンスを感じるし、ギター・ソロも、ベース・ラインも、ドラムも全部がすごいから、本当に驚きの連続で。聴いていて、すっかり奮い立たされましたね。それで、ああ、こういうのをやりたいなーって思ったんです。

——なるほど。というかね、前作の時から私はすごく感じていたんですよ、くつしたは少年ナイフみたいなバンドというか、少年ナイフに続く存在だなって。

ながおか おおーっ! あと、少年ナイフってごく身近なことを歌っているけど、それでも自分の持っている世界の中でイメージをバーンと広げていってるじゃないですか。だから、少年ナイフを初めて聴いた時は本当に衝撃でしたね!

インタビュー後編に続く

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